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『奇界遺産3』がやっと発売しました。七年ぶりとなる今作では北朝鮮のマスゲームから、北極のネネツ族、軍艦島に、5/19にクレイジージャーニーで放送されたバーニングマンまで、今回も過去最高レベルで世界のあらゆる奇妙な場所をめぐっています。気づけばもう2〜3年前からインタビューやメディア出演の際に「奇界遺産3をまもなく刊行」と自己暗示のように言い続けていました。本当にそろそろ出そう、と思っていたからです。2019年にもラジオで言った時には、たまたまラジオを聞いた担当編集者から「そろそろ出るらしいですね」と言われて焦るという事案も発生しています。しかしながらこの数年は慌ただしく海外や国内を飛び回っていて、どこかを新たに撮影すると「どうせならこれも入れよう」、「来月どこに行くからその撮影が終わったら始めよう」とか思っているうちに、終わりが見えなくなり(というか作業を始めるきっかけがなくなり)、気づけば七年もの日々が過ぎた次第でした。

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ところが、2020年に起きた新型コロナの流行によってさすがに旅が出来なくなり、それならばと本の制作に取り組み始めたのが2020年3月。結局、そこから一年くらい時間をかけて写真をセレクトしたり、文章を書いたり、場所の並び順を推考したりという、これまた終わりの見えない作業を繰り返して、最後は出版社に締め切りという現実を突きつけられて本気になり、おかげさまでやっと本になりました。編集はある意味撮影段階からはじまっていて、数年がかりで難解なパズルを我慢強く組み上げるような作業でしたが、どうにか組み上がりました。特に今年に入ってからは(もともと大してやっていない)SNSやネットからも離れて、ひたすら本の作業をしていたので、あまりこの一年の記憶もなく、本当に終わった実感がありません。

ただ過去一番時間をかけただけあって、今作では何となく、自分が「奇界遺産」を出した2010年頃、理想としていた本にある程度、到達した気もしています。その理想を言葉で言おうとすると難しいですが、簡単にいえば、とにかく自分が見てきた世界の強烈さ、そのもののような何か。本のどこを切り取っても混沌があるような、そんなイメージです。編集というのは普通、本に一定の整合性を与えるための作業であるわけですが、この本に関していえば、整合性をいかに避けつつ、しかし同時に一つの世界(奇界)に収めるか、というようなよくわからない作業になります。完成と崩壊を同時に目指すような作業です。結果、書店も置き場所にも困るであろう、奇妙な一冊ができあがりました。急いで読むとわけがわからなくなるので、ゆっくり読んでもらうとうれしいです。


奇界遺産3